2011年1月22日土曜日

出でよ、英傑!!

 平成23年の元旦を新居で迎えた。シドニーの中心部から電車で30分、閑静な郊外といえる。引越し荷物も片付き、やっと一息着いたら、当然のごとく「憂国の情」が戻ってきた。日本の「財政赤字」である。

 「借金をして贅沢をする」、「他人の金を国民にばら撒く」、「収入を超えた出費を重ねる」、歴代の日本政府は子供でも判るこんな馬鹿げた政策を長年繰り返してきた。
期待されて政権交代を実現した民主党もこの政策を継承して、今では政府と地方自治体の借金総額は一千百四十一兆円を超えているそうだ。それに加えて、集計もされていない行政法人個々の膨大な借金があり、国民一人当たりに換算すると、おそらく一千万円近い金が、当人の了解なしに累積されてしまった事になる。国民個々人では絶対に返済不可能なこの「日本政府の借金」を憂うこと頻りである。

 日本の「財政赤字」が破砕限界に達した場合、まず第一に想定されるのが、日本の対外信用の失墜に伴う「円価、株価の大暴落」であろう。物価高騰による国内経済の大混乱は当然の事ながら、海外からの投資も当然途絶え、資本引揚げも必ず起こる。円安による輸入価格の高騰も、国民生活に重大な被害を与える。100兆円あると云われている「外貨準備金」も、あっという間に支出されて底をつき、1,450兆円に近い個人資産もすべて国債に喰われて「死に金」となる可能性が高い。
全量を輸入原料に頼っているエネルギー料金(電気、重油、ガソリン等)、公共料金、食料品の高騰は当然のことながら、輸入原材料を使用している輸出産業はコスト高で生産を中止せざるを得ないであろうし、知的財産使用料も民間企業の海外活動も当然コスト高になり制限される。 毎年政府が赤字補填で依存している「国債発行」は行き詰まり、当然7%前後とされる外国資本所持の「日本国債」も「利払い不安」から手放されるだろう。必然的に国際金融市場からの資金調達も困難になり、今までの対外債務が膨張する。対外債務の返済延期を申し出た場合、必ず「在外資産凍結」という対抗手段で報復されるのが歴史の常だ。韓国のようにIMF基金に頼る方法もあるかもしれないが、IMFの資金規模から推測して、日本経済の救済は困難であろう。

円価を例にとると、明治4年、為替相場の対米円価は1ドル1円で始まった。昭和16年、太平洋戦争の開始直前まで16円であった。しかし、敗戦後のブレトン・ウッズ協定で360円の固定相場に移行、昭和60年のブラザ合意以降240円であったものが120円になり、現在は90円代で推移している。円高は輸出には不利だが、輸入のメリットは計り知れないほど高い。
小筆が就職したのは昭和37年、当時はまだ360円の固定相場であったが、ドル需要が強く、闇レートでは500円前後で取引されていた。学生時代、中元歳暮期にデパートでバイトをしていたが、日給は270円。同年代で知合いの米兵が新橋の「靴磨き」に1ドルのチップを渡したのでびっくりした事があった。就職前に決まっていた初任給が、税込み月額9,800円($27)前後であったからだ。若くして「円安の屈辱」を痛感した経験を持っている。

日中戦争と太平洋戦争、あれだけの大戦争を戦った結果、敗戦時には国内の産業施設はすべて焼失してしまい、財政赤字は一般会計の9倍、奇しくも現在の財政赤字と同率であった。経済は行き詰まり、円価は暴落して16円から360円になった。必要物資を輸入したくても「外貨」が無かった。国民生活は困窮の極限にあり、すべて米国からの援助物資と金融支援に頼った。円価の凋落は日本経済の破滅を意味している。
それを救ったのは皮肉にも金日成で、朝鮮戦争による「戦争特需」で日本経済は再生できた。
当時、日本の耐乏生活は、現在の日常生活からは想像も出来ないくらい貧しかった。満足な食糧もなく、衣類なぞはすべて「古着」で、下駄や草履を履いて通勤通学をしたものであった。しかし、国民はそれに耐えて懸命に働き、戦後復興に邁進した結果、今日の「世界一豊かな国家」を創造した。
しかし現在の政治と人心の荒廃は、この国家存続に関わる重大問題「財政赤字」に鈍感であるだけでなく、国全体が「目先の幸せ」に眼がくらみ、毎年借金の累積を重ねて行く政府に誰も文句を云わない。この日本政府と国民の「投げ遣り的な神経」をどう理解したら良いのだろう。

国家予算の半分以上を借金に頼り、期待された「埋蔵金」も限界にきている。支出抑制も無駄遣いの排除にも関心が払われず、野放図な支出が続いて「財政赤字額」は鰻上りに増えているが、誰も是正しようとしない。今年度の税収予測はたったの38兆円なのに、国債発行44.3兆円を計上して、一般会計予算、92.5兆円を執行しようとしている。これで国債発行残高は、GDPの1.8倍になるらしい。日本の借金総額は、平均税収の24年分近くになる。「財政赤字」が破砕限界に達していることは、素人目にも明らかである。これが健全な「国家運営」と云えるだろうか?

菅内閣は「増税」を検討しているらしいが、国民に財政赤字の結果責任を押し付けた上に、増税分まで負担させようとしている。いくら増税をしても「支出抑制」をしない限り「財政赤字」の根本は解決されない。
政府が「増税」を打ち出す前にやるべき事は、支出抑制である。最初に、行政組織の徹底的な見直しをして「小さな政府」を作ることである。「小さな政府」には、当然国会議員、地方議会議員定数の「大幅削減」と歳費、議員経費の低減があり、「道州制」を導入して国、地方の官僚数を削減すると共に、行政法人制度を徹底的に見直して特別会計の大削減に踏み切ることだ。政党助成金なんて代物は、第二の小沢一郎を育てるだけだから即中止する。何もしない「野次馬政党」に血税を使うなんてとんでもない話だ。

財政赤字が「安全圏」に戻るまでは、特別会計や、公共事業、文教振興、農業保障等を含むあらゆる予算、補助金、支援金制度を中断し、ODAを含む一切の海外支援も停止する。そして、国民にも協力を求めて、子供手当てを含む社会福祉関連の支給額も最低限に押さえることだ。敗戦直後の社会状況を想い起こせば、国民は少々の耐乏生活には耐えられるはずである。何故なら、日本の財政が破綻したら、すべてがなくなるのだから、改善するまでの間、国民にも外国にも我慢してもらうのは当然だ。日本国が崩壊したら、すべてが無くなるのだから我慢するしかない。

現在の日本は、国家回天の決意で大改革を実施して支出削減を図り、現況の「財政赤字」から脱却しないと未曾有の大混乱が間違いなく起こる。この瞬間にも国家危機は進行しており、「時間切れ到来」もカウントダウンの段階に入っている。現状を放置すれば、早晩日本は財政破綻を引き起こし、五等国以下に位置づけされて、回復不可能な国家になり下がる。すでに贅沢を経験している国民は、敗戦直後の日本人以上の「茨の道」を歩まざるを得なくなる事だけは確かである。

それを防ぐ唯一の方法は、英傑の選出で「救国内閣」を組織して、彼らの改革手腕に期待するしかない。「平成維新」の実行である。
しかし誠に残念ながら、現在の日本政界にはチャラチャラして小細工にだけ長けた輩は腐るほどいるが、真の宰相の器と資質を兼備する人物は見当たらない。この難局に挑むには、腹が据わって蛮勇があり、尚且つ広範な世界観を備えた有能な「ステーツマン」、すなわち「稀代の英傑」が必要だ。
今年も「英傑出現」を待望する日々は続くだろうが、果たして神は祖国に神風を呼び込んで下さるだろうか?

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